アミノ酸


 ヒトのからだの約60%は水で、残りの約半分がアミノ酸(タンパク質も含む)からなっています。
 タンパク質は、異なった20種類のアミノ酸が何百もつながって(ペプチド結合)できた化合物で、いろいろな配列をするため多種多様なタンパク質が作られます。

 アミノ酸は、アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもっている物質の総称として、アンモニア(ammonia+ine)に由来し、アミノaminoという名前がつけられました。

 各アミノ酸に共通する構造は、1個の炭素原子にアミノ基とカルボキシル基が1つずつ、さらに水素1個と側鎖が結合していることです。このためその炭素(α位)は不斉炭素となって光学的にL‐体、D‐体の2種類の異性体(光学異性体)を作りますが、高等生物に存在するのはすべてL‐体です。各アミノ酸は少なくとも1個ずつのアミノ基(窒素Nがあるため塩基性)とカルボキシル基(二酸化炭素CO2と水素Hが結合した形で酸性)をもつため、両性電解質で、さらに側鎖がもつ電荷により、中性、酸性、塩基性に分類されます。

 各アミノ酸は生体内において血漿や各種臓器、筋肉に分布し、アミノ酸の供給源としてアミノ酸プールamino acid poolを形成して、タンパク質合成や生理活性物質合成に利用されます。アミノ酸のうち8種(小児では10種)は生体内で合成されず食物から摂取する必要があるため、必須アミノ酸と呼ばれます。またアミノ酸は種々の生理活性物質の前駆体でもあり、例えばチロシンから甲状腺ホルモンやカテコールアミンが、トリプトファンからNADやセロトニンが、グリシンからヘムおよびプリン塩基が、アスパラギン酸からピリミジン塩基が、さらにアルギニンからポリアミンなどが合成されます。

必須アミノ酸 essential amino acids:
タンパク質を構成する約20種類のアミノ酸の中には、生体内で合成されないアミノ酸もあり、食物として外から取り入れなければいけないものもあります。
成人では窒素出納を正またはゼロに保つために食物などの形で外界から摂取しなければならないアミノ酸としてバリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジンの8種があります。これを必須アミノ酸といいます。幼児ではこのほかにアルギニン、ヒスチジンを摂取したほうが発育がよく、これらを準必須アミノ酸と呼ぶことがあります。
必須アミノ酸以外のアミノ酸は非必須アミノ酸と呼ばれ食物から直接摂取する必要はありませんが、体タンパクの合成には必要とされます。



・味
 側鎖がシンプルなアミノ酸は甘味をもち、側鎖が長く、分岐しているアミノ酸には苦味があり、側鎖にもう一つカルボキシル基がついているとうま味と酸味があります。また、このカルボキシル基にナトリウムが結合してナトリウム塩になると酸味が消え、うま味が強くなります。
 食物タンパク質を構成するアミノ酸でもっとも多いのはアスパラギン酸とグルタミン酸で、1/3〜1/2近くを占めます。


名称 略記号 語源・分布・働きなど 電荷による分類・呈味
必須アミノ酸
ルギニン*
 Arginine
Arg 硝酸銀を加えると白く光る銀塩が得られるため、ラテン語の「銀(argentum)」あるいはギリシャ語の「明るい、白い(arginoeis)」に由来。
もっとも塩基性の高いアミノ酸で、生体内では尿素回路の中間体として生合成される。アルギニンは速やかに分解されるため、特に必要量を合成できない子供では必須アミノ酸になっている。
塩基性アミノ酸
苦味
チオニン
 Methionine
Met 含硫アミノ酸の一つで、メチルmethyl+イオウthion+ineの意味。
タンパク質中での含有量は2〜4%と少ないが、生体内ではメチル基供与体として重要な役割を担う。脂質代謝に関与し肝機能の維持に重要である。
中性アミノ酸
苦味
ェニルアラニン
 Phenylalanine
Phe フェニル基のついたアラニンの意味で、脳内で神経伝達物質に変換される重要な必須アミノ酸である。フェニルアラニンは酵素(フェニルアラニン4-モノオキシゲナーゼ)によりチロシンへ変換され、この酵素が先天的に欠損している人ではフェニルケトン尿症となる。タンパク質中に2〜3%含まれる。 中性アミノ酸
苦味
ジン
 Lysine
Lys カゼインの加水分解生成物から発見され、タンパクの分解で生じた(解く、離すlysis)意味で命名。アミノ基を2個もつ。
もっとも不足しやすいアミノ酸である。生体のタンパク質中に2〜10%含まれており、抗体やホルモン、酵素などの素材として利用され、生体の成長や修復に関与する。植物性タンパク質中には含量が低く、特に穀類タンパク質には少ない。欠乏すると成長障害を起こすことがあり、動物性タンパク質と組み合わせて摂取することが必要である。
塩基性アミノ酸
苦味
スチジン*
 Histidine
His 種々の組織タンパクの分解で生成されるため、組織(ギリシャ語histos+id+ine)から命名。
特に乳幼児の成長に必須なアミノ酸である。また、アレルギー反応に関与するヒスタミンの前駆体である。
塩基性アミノ酸
苦味
塩酸塩は酸味
リプトファン
 Tryptophan
Trp トリプシン(消化酵素)をタンパクに作用させて得られる(トリプシンtrypsinによりあらわれるphanein アミノ酸)ことから命名。
脳内の神経伝達物質であるセロトニンやメラトニンの原料であり、精神機能の維持に重要である。
中性アミノ酸
苦味
ソロイシン
 Isoleucine
Ile ロイシンの異性体(isomer)の意味。
生体内では2-オキソ酪酸から生合成される。分岐鎖アミノ酸(BCAA)であり、筋肉のエネルギー代謝に深く関わっている。
中性アミノ酸
苦味
イシン
 Leucine
Leu 白く(白いleuco)きらきら光る結晶として得られることから命名。
一日の必要量がアミノ酸の中で最大である。ただし含有する食物も多いため、通常の食事では不足しにくい。肝臓の保護作用があるほか、分岐鎖アミノ酸(BCAA)として、筋肉のエネルギー代謝に深く関わっている。
中性アミノ酸
苦味
リン
 Valine
Val 化学的にアミノ吉草酸であることから、吉草酸(valeric acid)に因んで命名。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)であり、筋肉のエネルギー代謝に深く関わっている。
中性アミノ酸
苦味
レオニン
 Threonine
Thr 四炭糖のスレオースthreoseに構造が似ていることから命名。
酵素の活性部位などを形成し、成長や抵抗力に必要。穀類などでは含量が低いため不足しやすい。
中性アミノ酸
甘味、うま味(高濃度)
非必須アミノ酸
アラニン
 Alanine
Ala アルデヒド・アンモニアに青酸を作用させて合成されたので、アルデヒドに因んで(aldehyde+an+ine)命名。
体内でピルビン酸にグルタミン酸からアミノ基が転移して作られる。また、逆反応にて分解される。分岐鎖アミノ酸が骨格筋で代謝される際、その窒素はグルタミンおよびアラニンとして放出される。
肝臓のエネルギー源として利用されやすい。とり胸肉(皮なし)、さわら生、牛・豚レバーに多く含まれる。
中性アミノ酸
甘味、うま味(高濃度)
アスパラギン
 Asparagine
Asn アスパラガスの汁から発見され、植物名に因んで命名。
植物タンパクに多く存在し、体内ではアスパラギン酸から作られ、アスパラギナーゼによってアスパラギン酸とアンモニアに分解される。
植物の窒素代謝に重要な物質。
酸味
アスパラギン酸
 Aspartic acid
Asp 体内ではオキサロ酢酸にグルタミン酸のアミノ基を転移することにより作られる。タンパク質や他の窒素化合物の合成材料となる他、中枢神経において興奮性神経伝達を担う興奮性アミノ酸として働くと考えられる。体内の窒素代謝やエネルギー代謝(TCA回路)に関与し、疲労に対する抵抗力を高め、スタミナを増すといわれている。エネルギー源として最も利用されやすい。牛肉、納豆、大豆もやしに多く含まれる。 酸性アミノ酸
酸味、うま味
システイン
 Cysteine
Cys 膀胱結石cystic calucuiusからシスチンが分離され、2分子のシステインが酸化されてシスチンが生成することから膀胱に因んで命名。生体内ではメチオニンからシスタチオンを経て合成されるが、乳幼児ではこの作用が弱いため不可欠な含硫アミノ酸である。解毒機構において重要なグルタチオンを構成する。
白い皮膚に多い黄色メラニンの産生を増やすことによって黒いメラニン色素の産生を抑える働きがある。
中性アミノ酸
苦味と甘味
塩酸塩は酸味
グルタミン
 Glutamin
Gln サトウダイコンの根汁から発見され、生体内にもっとも多く含まれる。グルタミン酸とアンモニアから作られ、アミノ基転移酵素の基質として種々の生体機能に関わっている。胃腸や筋肉などの機能を正常に保つために必要。 酸性アミノ酸
甘味
グルタミン酸
 Glutamic acid
Glu 小麦タンパクのグルテンglutenから分離されたことから命名。
昆布のうまみ成分として調味料に広く使用されている。生体内では脳内での含量が高く、神経情報伝達(興奮性神経伝達物質)に関与している。
躁病および軽躁患者の情緒変化を引き起こす可能性がある。過剰摂取により頭痛、のぼせ、手足のしびれ、神経症、幻覚、重度の不眠などを起こすことがある。海藻(昆布)、強力小麦粉、本マグロ赤身に多く含まれる。
酸性アミノ酸
酸味、うま味
グリシン
 Glycine
Gly 分子量が一番小さくもっとも単純な構造で、光学異性体(D、L体)もない。ケラチンの水解物から発見され、セリンから生合成できる。その甘み(giyc=甘い)から命名。
ヘモグロビンや肝臓中の酵素などの構成成分としての役割が重要で、グリシン受容体を介して抑制性神経伝達物質として働く。統合失調症の補助療法に有効性を示す。コラーゲン、ケラチン、絹に大量に含まれ、保湿作用、静菌作用、酸化防止作用がある。
中性アミノ酸
甘味、うま味(高濃度)
プロリン
 Proline
Pro ピロリジン環にカルボキシル基(-COOH)がついた構造のため(pyrrolidine)、命名。アミノ基の代わりにイミノ基(=NH)が入る。
生体内ではグルタミン酸から生合成される。食品中では穀類タンパク質のプロラミンに多く含まれ、生体内ではコラーゲンの主要成分として多量に含まれている。その半分は水酸化されてヒドロキシプロリンとして存在する。脂質代謝に関わる。プロセスチーズ、マカロニスパゲティー、生いかなどに多く含まれる。
中性アミノ酸
苦味
セリン
 Serine
Ser 絹タンパクのセリシンsericin(絹のラテン名:セリクムsericum)より分解されたことから命名。
生体内での他のアミノ酸やリン脂質(フォスファチジルセリン)などの様々な成分の前駆体として重要である。皮膚の潤いを保つ天然保湿因子の主成分である。プロセスチーズ、本マグロ赤身、納豆に多く含まれる。
中性アミノ酸
甘味、うま味(高濃度)
チロシン
 Tyrosine
Tyr チーズ(ギリシャ語でチーロスtyros)をアルカリで処理して得られたことから命名。
生体内では食物からのチロシン摂取量が欠乏した場合、必須アミノ酸であるフェニルアラニンから生合成される。チロシンは甲状腺ホルモン、皮膚や紙の黒色色素であるメラニンの原料、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンの前駆体であり、感情や精神機能の調節に関与する。フェニルケトン尿症、睡眠不足後の覚醒の改善に有効性を示す。
甲状腺ホルモン剤との併用でその作用を増強させる恐れがある。また、甲状腺機能亢進症の人では症状を悪化させる可能性がある。牛肉サーロイン赤味、さけ、タケノコなどに多く含まれる。
中性アミノ酸
苦味
必須アミノ酸を「雨降りひと色バス」(太字部分)と覚えるとよいでしょう。
*印:幼児期のみ必須。





◆アルギニン Arginine(Arg)

 生体内では尿素サイクルの過程で代謝される中間体でアルギニノコハク酸からアルギニノスクシナーゼの作用によって生合成されます。アミノ酸の中で最も塩基性が高く、哺乳動物によっては生体内である程度は合成されるもののアルギナーゼの触媒作用によってすぐに尿素とオルニチンに分解されてしまうため、特に必要量を合成できない子供では必須アミノ酸になっています。

 内皮由来血管拡張因子である一酸化窒素(NO)の前駆体のため、成長ホルモンの分泌促進、免疫機能の向上、脂肪代謝の促進など、生体内で種々の機能に関与しています。

 アルギニンを多く含む食品として落花生、伊勢エビ、とり胸肉(皮なし)があります。

−期待されている作用−

・免疫機能を高める

・成長ホルモン分泌促進作用

・強壮、男性の精子数の増加

・脂質代謝促進

・血圧と血流の調節・・・アルギニンから生成する一酸化窒素が関与

−有効性−

・狭心症・・・運動耐性、QOLの改善

・硝酸塩耐性の改善

・末梢血管疾患

・ED(勃起不全)の改善

・間質性膀胱炎の症状(痛み)改善

−注意−

 副作用としては、腹痛、鼓腸、下痢、アレルギー症状(顔、手の発赤や腫れ、目の充血、鼻づまり)などが報告されています。また、過剰摂取により肌荒れ、皮膚が厚くなる、関節肥大、成長期の子供に与えすぎて巨人症になるとの報告があります。

(1)服用してはいけない人

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので長期摂取は避けるようにして下さい。

・腎機能障害の人

・アレルギー体質、喘息、肝硬変の患者
  アレルギー反応を引き起こしたり、気道炎症を悪化させたりすることがあるので注意して下さい。

(2)医薬品との相互作用

 報告はまだありませんが、降圧剤や硝酸塩、シルデナフィル(バイアグラ)との併用で、低血圧が起きる可能性があるので、注意して用いて下さい。


◆メチオニン Methionine(Met)

 硫黄を含むアミノ酸で、硫黄原子はシステイン生合成の原料となります。タンパク質中での含有量は2〜4%と少ないが、生体内ではメチル基供与体としてコリン、カルニチン、クレアチニン、神経伝達物質の合成等の役割を担い、高脂血症、心臓病のリスクファクターと考えられている過剰なホモシステインを代謝し、体内ではこのホモシステインから合成されるため、脂質代謝や肝機能の維持など健康増進に重要となります。

 メチオニンを多く含む食品として小麦胚芽、鶏卵、とり胸肉(皮なし)があります。

−期待されている作用−

・うつ症状を改善する

・血中のヒスタミン濃度を下げる

・解毒作用

・利尿作用

・毛髪の発育を促す

−有効性−

・アセトアミノフェン中毒の際の肝臓障害防止(アセトアミノフェン摂取後10時間以内経口摂取)

−注意−

・副作用としては、悪心、嘔吐、めまい、嗜眠、低血圧、興奮が報告されています。

・メチオニン摂取により血中のホモシステイン濃度を上昇させるので、動脈硬化症を引き起こしたり、悪化させるおそれがあります。また、多量に摂取した場合、危険性が示唆されているため、100mg/kg以上の摂取は避けて下さい。

(1)服用してはいけない人

・重篤な肝疾患を持つ人

・統合失調症患者
  多量に摂取すると、混乱、見当識障害、せん妄、興奮、動揺などの症状が起きることがある

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので摂取は避けるようにして下さい。

(2)医薬品との相互作用

 報告はまだありません。


◆フェニルアラニン Phenylalanine(Phe) 

 トリプトファンと同じく芳香族側鎖をもつアミノ酸で、主に肝臓で酵素(フェニルアラニン4-モノオキシゲナーゼ)によりチロシンへ変換され、さらに神経伝達物質ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンに変換されます。この酵素が先天的に欠損している人ではフェニルケトン尿症となります。

フェニルケトン尿症:
遺伝子の異常により、フェニルアラニンをチロシンに変える変換酵素が欠乏し、そのためからだの中にフェニルアラニンのみが増加する。フェニルアラニンの過剰により発育中の中枢神経を障害し重い知的障害が起こる。また、変換が行われないためチロシンの産生が減り、その結果、チロシンより作られる色素(メラニン)が減少し白子となる。

 フェニルアラニンを多く含む食品としてプロセスチーズ、本マグロ赤身、納豆があります。

−期待されている作用−

注)異性体によって効果が異なるが、ここではL型について記載

・血圧上昇

・肝機能亢進

・抗うつ作用

−有効性−

・白斑治療・・・L-フェニルアラニン経口摂取、あるいは外用と紫外線A波照射との組み合わせ

−注意−

 過剰に摂ると血圧が高くなる可能性がありますので注意して下さい。

(1)服用してはいけない人

・アルカプトン尿症、フェニルケトン尿症、チロシン血症、チロシン尿症患者

・妊婦、皮膚がんの人
  過剰摂取により血圧が高くなる可能性があるので特に注意して用いて下さい。

・統合失調症の人
  遅発性ジスキネジー(運動障害)を悪化させることがあるので注意して用いて下さい。

(2)医薬品との相互作用

・パーキンソン病患者において、レボドパと中性アミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン)の併用は、振せん、硬直、オン・オフ症候群を悪化させることがあります。


◆リジン Lysine(Lys) 

 リジンは、必須アミノ酸の中で、もっとも不足しやすい、6位(イプシロン位)にアミノ基をもつ塩基性アミノ酸です。体タンパク質の中には2〜10%含まれており、抗体やホルモン、酵素などの素材として利用され、生体の成長や修復に関与します。

 植物性タンパク質中には含量が低く、特に穀類タンパク質には少ない。欠乏すると成長障害を起こす、飽和脂肪酸やコレステロールが増えやすくなる、貧血になる、集中力の低下、めまい、目の充血などの症状がおこるとされ、動物性タンパク質と組み合わせて摂取することが必要です。

 リジンを多く含む食品としてプロセスチーズ、本マグロ赤身、とり胸肉(皮なし)があり、逆に小麦は少なく、トウモロコシにおいてはほとんど含んでいません。

−期待されている作用−

・体の組織の修復

・抗体、ホルモン、酵素の合成

−有効性−

・単純ヘルペス感染の再発の低減

・代謝性アルカローシスの治療

−注意−

 副作としては、下痢、腹痛が報告されています(10g/日を5日間摂取)。

(1)服用してはいけない人

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので摂取は避けるようにして下さい。

(2)医薬品との相互作用

 カルシウムとの併用で、カルシウムの吸収を促進し、尿中排泄を減少させることがあります。


◆ヒスチジン Histidine(His) 

 ヒスチジンは塩基性アミノ酸の一つで、特に乳幼児の成長に必須なアミノ酸です。また、血管拡張やアレルギー反応に関与するヒスタミンの前駆体でもあります。新生児期は合成が少ないため、必須アミノ酸に加えられました。

 ヒスチジンを多く含む食品としてかつお生、豚ロース赤身、チェダーチーズ等があります。

−期待されている作用−

・成長に関与

・白血球の生成促進

・神経機能の補助、ストレスの軽減・・・ヒスチジンにより神経伝達物質のヒスタミンが合成される

・精力増強

−有効性−

 尿毒症あるいは長期の透析による貧血、関節リウマチに対しては効果がないことが示唆されている。

−注意−

 副作用の報告はまだありません。

(1)服用してはいけない人

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので摂取は避けるようにして下さい。

・葉酸欠乏症の人
  ヒスチジンを摂取すると、ホルムイミノグルタミン酸が蓄積する恐れがあります。

(2)医薬品との相互作用

 報告はまだありません。


◆トリプトファン Tryptophan(Trp) 

 インドール環をもつ芳香族αアミノ酸で、種々のタンパク質に含まれていますが、その含量は低いく、タンパク質の酸加水分解によりほとんど完全に破壊され失われます。動物体内ではセロトニンやメラトニンとなり神経伝達物質やホルモンとして働くほかキヌレニン、ニコチン酸の生成系を経て補酵素NAD、NADPの合成に用いられます。トリプトファン欠乏による白内障が知られており、トリプトファン欠乏食によりペラグラを起こすことがあります。

ペラグラ:
ニコチン酸またはその前駆物質であるトリプトファンの欠乏症で、これにビタミンB群の欠乏を合併する。露光部に生じる熱傷様紅斑などの皮膚症状、下痢を主とする消化器症状、痴呆や末梢神経障害などの精神神経障害を三主徴とし、頸部・前胸部の首飾り様の紅褐色斑が特徴的とされる(カザールの首飾り)。かつてはとうもろこしを主食とする米国南部の黒人に多くみられた。

 トリプトファンを多く含む食品としてプロセスチーズ、鶏卵、とり胸肉(皮なし)がありますが、トウモロコシにおいてはほとんど含まれていません。

−期待されている作用−

・精神を安定させる・・・セロトニンの合成による

・鎮静作用がある

・成長ホルモンを促す

−有効性−

・睡眠障害の治療・・・トリプトファンからセロトニン、またセロトニンを経てメラトニンが合成される

・抑うつの治療・・・欠乏すると抑うつになりやすい

・月経前不快気分障害(PMDD)

・禁煙補助薬

−注意−

・副作用としては、胸焼け、腹痛、おくび、膨満、吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状のほか、頭痛、ふらつき、口渇、かすみ目、運動失調、傾眠などが報告されています。また、サプリメントとしてトリプトファン製剤を摂取して、好酸球増多筋痛症候群という健康障害を引き起こした事例があります。

(1)服用してはいけない人

・妊婦
  妊娠中の摂取は危険です。経口摂取すると胎児の呼吸不全が起きることがあります。

・肝硬変の人
  長期摂取すると脳内にトリプトファンが増え、セロトニンが過剰になり脳の機能が低下して昏睡状態に陥る(肝性脳症)ことがあります。

(2)医薬品との相互作用

・抗うつ剤の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)やデキストロメトルファン(鎮咳剤)などの医薬品またはセロトニン様作用のあるハーブ・サプリメントの併用で、セロトニン症候群(不安、興奮、発汗、寒気などの症状)や脳血管収縮障害が起こる可能性があります。

・ベンゾジアゼピン誘導体、フェノチアジン誘導体との併用で、性的抑制解除、可逆的ジスキネジー(運動障害)、パーキンソン様硬直などの症状が出ることがある


◆分岐鎖アミノ酸(BCAA;branched chain amino acid)
   バリン Valine(Val) 
   イソロイシン Isoleucine(Ile)
   ロイシン Leucine(Leu) 

 筋肉の組織は、アクチンとミオシンというタンパク質でできています。このアクチンとミオシンの主成分はロイシン、イソロイシン、バリンというアミノ酸で、その分子構造から分岐鎖アミノ酸(BCAA=Branched Chain Amino Acid)と呼ばれます。筋肉で代謝され、筋肉のエネルギー代謝に深く関わっています。また、肝性脳症の患者の栄養管理では必須の栄養素とされています。

 BCAAは、食物ンパク質に含まれる必須アミノ酸の約50%、筋タンパク質においては約35%を占めています。そこでBCAAを補給すれば、筋肉組織の原料が豊富になり、筋力アップに効果をもたらすことになり、トレーニングの前・後、なるべく空腹時に摂取すると、筋肉の損傷を素早く回復し、筋肉痛や筋肉疲労を防ぐことができると考えられています。

バリン:パントテン酸の生合成の出発材料となり、成長促進、血液中の窒素バランスの調節などに関与しています。
     ほんまぐろ赤身、牛・豚レバー、とり胸肉皮なしなどの食品に多く含まれます。

イソロイシン:生体内では2-オキソ酪酸から生合成され、成長促進、血管拡張、肝機能亢進の作用をもつとされています。
        ほんまぐろ赤身、とり胸肉皮なし、プロセスチーズなどの食品に多く含まれます。

ロイシン:1日の必要量が最大。肝臓の保護作用、筋タンパク質の分解抑制と合成促進の働きがあります。
      プロセスチーズ、かつお生、牛肉サーロイン赤身などの食品に多く含まれます。

−期待されている作用−

・筋肉をつくる

・疲労を抑える・・・ヒトに対して信頼できる充分なデータが見当たらない

疲労:
筋肉疲労: 運動を続けることにより血中の乳酸(筋肉の疲労物質)が増え、筋肉中のpHが下がり、筋収縮しづらくなる
精神疲労: 長時間運動を行うと脳が「もう疲れたから体を休めよう」と思って、やる気が落ちたりだるさを感じたりする疲労
    長時間運動を行うと血液中のBCAAの濃度が低下し、トリプトファン濃度が上昇する。トリプトファンは通常アルブミンと結合した形で存在し、脳内でアルブミンと遊離して、セロトニン(中枢性の疲労物質)に変換される。

・ダイエット効果(脂肪燃焼の促進)・・・ヒトに対して信頼できる充分なデータが見当たらない

−有効性−

・運動中の筋肉消耗の低減

・慢性肝性脳障害患者の肝機能および窒素バランスを改善

・躁的興奮を軽減

・遅発性ジスキネジーの運動障害を軽減

・食欲およびカロリー摂取量が速やかに増加

・運動能力の向上には効果がないことが示唆される

−注意−

 単にタンパク質を多く摂っただけでは、筋肉が大きくなるわけではありません。筋肥大を期待するのであれば、トレーニングと炭水化物を摂ることが最も必要です。

(1)服用してはいけない人

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので過剰摂取を避けるようにして下さい。

・アルコール依存症患者
  肝性脳症が1例報告されています。

・メープルシロップ尿症(分岐鎖アミノ酸が代謝されない先天性異常)の患者
  痙攣や身体的・精神的発育遅延が起きることがあります。

・筋萎縮性側策硬化症(ALS)患者
  分岐鎖アミノ酸の使用は、肺疾患の悪化および死亡率上昇したという報告があります。

(2)医薬品との相互作用

 分岐鎖アミノ酸と抗パーキンソン剤のレボドパの併用で、小腸と脳におけるレボドパの輸送を抑え、作用を弱めることが考えられます。また、インスリン分泌を亢進する可能性がある糖尿病治療剤とでは薬剤の作用を強めることが考えられます。


◆スレオニン Threonine(Thr) 

 スレオニンは最後に見つかった必須アミノ酸の一つで、穀類などでは含量が低いく、不足しやすいために穀類の栄養強化などに用いられています。精白米に添加する場合にはリジンとのバランスが大切とされ、どちらか一方だけを補った場合はかえってアミノ酸の栄養価が低下してしまいます。また、成長や抵抗力に関与しているために不足には注意したいアミノ酸です。

 スレオニンを多く含む食品としてはとり胸肉皮なし、きはだまぐろ生、鶏卵などがあります。

−期待されている作用−

・肝機能を高める

・成長促進・・・欠乏すると成長障害を起こす

・貧血・・・欠乏により貧血を招く

−有効性−

・脊髄痙縮・・・痙縮を緩和したという報告がある

−注意−

 副作用はほとんどありませんが、下痢などの軽微な胃腸障害、頭痛、鼻漏、放屁、便秘、皮疹が報告されています。

(1)服用してはいけない人

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので過剰摂取を避けるようにして下さい。

・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人
  肺機能を低下させる恐れがあるとの報告があります。

(2)医薬品との相互作用

 スレオニンは脳血液関門を通過する際に他のアミノ酸と競合すると思われるので、他のアミノ酸濃度が高いとスレオニンの中枢における作用が減弱されることが考えられる。


◆グルタミン Glutamin

 グルタミンは、からだに最も多く含まれるアミノ酸で、特に筋肉中に多く存在し、ロイシン同様に筋タンパク質の分解抑制と合成促進に関与して筋力アップと筋肉損傷の回復に重要な役割を担います。また、生体内ではアミノ基転移酵素の基質として種々の生体機能に関わっています。

 体内でグルタミン酸とアンモニアから合成できるアミノ酸ですが、過度のストレスが加わる状況下では、体外からの補給が勧められます。食品から補充する場合は、高温で分解されるため刺身や生肉から摂る必要があります。

−期待されている作用−

・筋タンパク質の分解抑制と合成促進

・免疫細胞の発育と増殖促進

・小腸粘膜の増殖促進・・・腸管のエネルギー源、修復に利用

・肝障害、アルコールの代謝改善・・・グルタミンはグルタチオンの前駆体である

−有効性−

・放射線療法中の食道がん患者におけるリンパ球数低下の予防

・がん化学療法による粘膜の炎症(口内炎)

・運動能力の向上に効果がないことが示唆されている。

−注意−

(1)服用してはいけない人

・妊婦、授乳婦
  安全性については、信頼できる充分なデータがないので過剰摂取を避けるようにして下さい。

・神経および精神疾患(躁病)の人
  グルタミンはグルタミン酸(興奮性神経伝達物質)とアンモニアに代謝されることから、神経系に作用することが考えられます。

・肝性脳症の人
  グルタミンはアンモニアに分解されるため、肝性脳症を悪化させる可能性があります。

(2)医薬品との相互作用

・グルタミンはグルタミン酸に分解されるため、理論的には抗痙れん薬の効果を弱めることが考えられます。




〔参考〕

 長谷川榮一:新・医学ユーモア辞典 改訂第2版,エルゼビア・ジャパン,2002
 アミノ酸大百科:味の素KKホームページ
 木下訓光:スポーツ医学領域のサプリメント検証,アンチ・エイジング医学-日本抗加齢医学会雑誌,Vol.1 No.1,41-46,2005
 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト:独立行政法人 国立健康・栄養研究所ホームページ
 清水俊雄:機能性食品素材便覧,薬事日報,2004
 奥田拓道:健康・栄養食品事典,東洋医学舎,2002




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